みなさんのご家庭では、このお正月に何を召し上がりましたか?
おせち料理は「自宅で作る」「購入する」という選択肢で語るものではなく、大事なのは今も昔も、新年を迎えるにあたって普段とは少し違う料理を用意し、家族や親しい間柄の人たちと食卓を囲んで食べるということなのかな、と私は思っています。
そんな考えは、私の祖母のおせちにさかのぼります。
私の実家は代々、神戸出身なのですが、あるときふと、お正月料理にも地方ならではのオリジナリティがあるのではと思い、親世代に尋ねてみたことがありました。
両親は戦争の只中に育った世代で、子どもの頃に家族でおせち料理を囲んだ記憶はないとのこと。ではその上の世代、祖父母の時代はどうだったのかというと、父より年上の伯母が当時のことを覚えていて、祖母の料理のことをいろいろ教えてくれました。
祖母の用意するお正月のお重の中には、もちろん黒豆や数の子、ごまめなど定番の品々もありましたが、メインのごちそうとしていつもたっぷり入っていたのが、ハムやソーセージだったのだそうです。

時は大正時代の終わり頃。味噌問屋の長女に生まれ、会社員の祖父に嫁いだ祖母は、雑誌『主婦之友』の料理ページを見ながら、子どもたちに手作りのカスタードクリームを使ったおやつを作ってくれるようなお母さんだったそうです。
当時から神戸にはパン屋さんやデリカテッセンなど、ヨーロッパから入ってきた新しいお店がたくさん軒を連ねており、若い主婦であった祖母は、そんなハイカラな神戸の街を歩いて、ごひいきのハム屋さんを見つけたのかもしれません。
デリカテッセンのショーケースの中で、キラキラ輝いているおいしそうなハムやソーセージ。そんなお気に入りのごちそう料理を、家族とお正月に囲むおせち料理のとっておきのメインに据えた、祖母の思いが伝わってきました。
その影響か、私も家族と囲むおせちには、肉料理をたっぷり入れます。ミートローフや鶏ひき肉を使った松風焼きなど、冷めてもおいしい肉料理は、我が家のお正月に欠かせません。そしてもちろん、ハムやソーセージも。
年始に家族や大切な人と囲む食卓には、みんなが大好きな、ちょっと贅沢なおいしいものを、こだわらずに選べばいいのではないでしょうか。そんなことを思わせる、懐かしい祖母の思い出です。
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